作業員時代まとめ その3 「初めての入域とC教育」

 1F作業員としての登録が済んだ翌日、1F構内に入域出来ることになった。工事は、メガフロートと呼ばれる人工の浮島に関わるものだ。この浮島には汚染水が溜められていた。この工事に割振られたのは小淵建設社長の小淵さんと私の2人だけ。

 作業者証とガラスバッジが付いたネックストラップを首に掛け、弁当が入ったレジ袋を手に持って、小淵さんと一緒にJヴィレッジから1Fに行くバスに乗った。バスが国道6号線を北へと進んで行くと、未だに誰も住んでいない家や壊れたままの店舗があり、原発災害の恐ろしさを感じた。

 30分ほどで1Fに到着。バスから降りて、入退域管理棟と呼ばれる建物に歩いて行く。入退域管理棟は名前の通り、1F構内に出入りする人の管理をするための建物だ。

 入退域管理棟の中に入ると、靴を脱いでレジ袋に入れ、金属探知機を通った。檻のような所の中に作業者証を読み込ませ、静脈認証をする機械があるので、小淵さんに教わりながら処理した。

 不織布マスクや綿手袋が配備されているので、それを身に着け、靴をロッカーに置いて、さらに進む。

 APDがいくつも入っている機械があるので、緑色のランプが点いているものを抜き取る。少し先に入退域の管理をする機器があるので、そこにAPDをセットし、作業者証と作業件名などのデータが入った「バーコード」を読み込ませ、画面をタッチして入域処理をする。

 APDを持っていることを係の人に確認してもらい、遊園地の出入口にある様な「回転するバーが付いたゲート」を通ると管理区域に入域したことになる。

 さらに進むと全面マスクが入ったカゴがあるのでそこから1つ取る。配備されているレジ袋を取り、その中に全面マスクを入れる。棚に靴があるので、取り出して履く。靴カバーも近くに配備されているので、靴の上から被せる。その先に構内を循環しているバスの待合所がある。

 バスに乗り、免震重要棟(以下、免震棟)に向かう。免震棟は、事故が起きてから事故対応の拠点として使われている地震に強い建物だ。中には作業に必要なタイベックや下着などが配備されているのでそれを持って、OUAの休憩部屋に向かう。休憩部屋は、狭いのに作業員が何人もいたので、ストレスを感じた。

 監督との待ち合わせ時間の少し前に、小淵さんと一緒に免震棟から外に出る。少しするとOUAの監督と東電社員がやって来た。車で港湾の前に行き、監督と東電社員は現場の確認をしていた。現場にいたのは10分弱。移動中に1号機、2号機、5号機、6号機の建屋、メガフロート、港湾、壊れたタンクや建物を見ることが出来た。津波の威力と恐ろしさを感じることが出来た。

 免震棟の中に入り、靴を脱ぎ、タイベックなどの装備を脱いで、身体サーベイを受ける。身体サーベイは、体が放射性物質で汚染していないことを確認するために行なわれる。

 休憩場所に戻って着替え、少し休憩したあと、入退域管理棟にバスで向かった。 入退域管理棟で全面マスクを返し、体が放射性物質で汚染されていないかを確認する。持ち物がある場合には、それも汚染の確認をする。

 その確認のあと退域の処理をする。機械にAPDの情報を読み込ませると、入域時間、退域時間、浴びた線量などが書かれていた紙が出てくるので、それを受取る。APDは入ってくる時に取った機械に戻す。

 1FからJヴィレッジに行くバスがあるので、それに乗る。Jヴィレッジから 開進総建の事務所に行き、終礼までの間は書類を書いて過ごした。

 現場には10分もいなかったし、特になにもしていないが、今日の作業には「C教育」と呼ばれる現場での教育が含まれていた。入退域の仕方は難しく感じたが、他の作業員はすぐに慣れると言っていた。

作業員時代まとめ その4 「汚染水タンクの雨どい取付け工事」へ

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