作業員時代まとめ その8 「労働災害」

私が作業員として働いている間、私自身は一度も労働災害にあわなかった。だが、開進総建の下請けとして一緒に働いていた仲間には、労働災害が2件発生した。また、開進総建が請負っている工事ではないが、死亡災害が3件起きたので、それを記す。

3人の怪我 2014年11月7日

作業をしていると救急車のサイレンが聞こえたが、どうせ大したことないだろうと思い、気に留めないで作業を続けた。

1Fの休憩所に戻ると、「開進総建の作業員3人が怪我をした」と知らされた。あのサイレンは仲間の怪我を知らせるものだったのだ。

タンクの設置工事中に、タンクの部材が高所から落下し、部材が作業員3人にぶつかった。この災害は、タンクの増設をしていた他の元請けの作業が、原因で起きたもので、開進総建の作業員はそれに巻き込まれた形だ。現場が近かったことも原因なので、東電の作業エリア調整にも問題があった。

軽傷だった作業員は、すぐに現場に戻ることが出来た。
足を骨折した作業員は、数か月で戻ることが出来た。
だが、一時意識不明になった作業員は、話せる状態までになったようだが、現場に戻ることはなかった。

私は、それまで放射線にばかり気を付けていたが、この災害が起きてからは労災にも気を付けるようになった。

J2タンクエリアA4タンク旋回梯子レール落下による災害発生の原因と対策について
平成26年11月20日 東京電力株式会社

成田さんの怪我 2015年1月15日

この日の作業が終わり、現場から開進総建の事務所に戻ってくると、成田さんが作業中に怪我をした、と知らされた。

成田さんは、汚染水タンクの雨どい取付け工事と屋根取付け工事で、世話になった作業員だ。彼とは何度も飲みに行った。

ディスクグラインダーで指を切って、一緒に作業していた作業員は「骨の白い所まで見えていた」と言っていた。彼の左手の中指は骨折していた。

彼は翌日も開進総建の事務所に来ていた。休んだ方がいいと思うが、それだと休業災害になってしまう。

出来るだけ災害を軽く見せようとするような組織体質は重大な問題だし、本人にとっても、それが得になってしまうのも問題だ。

福島第一原子力発電所の状況 平成27年1月16日 東京電力株式会社

救急車 2014年3月28日

作業が終わり、仲間と一緒に車で帰っていた。広野インターチェンジから高速道路に乗ると、合流する時に富岡方面から救急車が来たので、その後ろを走ることになった。

あとで、1Fで労災が起きて、被災した作業員が亡くなったことを知った。その作業員を乗せた救急車が、いわき市内の病院に向かったのは午後3時26分。私たちが開進総建事務所から出たのが、午後3時50分ごろなので、前を走る救急車は、その作業員を乗せた救急車だった可能性がある。

福島第一原子力発電所 掘削作業中における作業員の被災について
平成26年3月28日東京電力株式会社

福島第一原子力発電所の状況 平成26年3月31日 東京電力株式会社

1Fと2Fでの連続死亡災害 2015年1月19日及び20日

20日に、タンクからのタンクへ汚染水の移送を予定していたが、前日(19日)に1Fで大きな災害があったので保留になっていた。私たちは、その準備だけを済ませ、現場で待っていた。

少し経つと監督からGOサインが出たので、本作業を始める。しかし、間もなく中止になった。2Fでも大きな災害が起きたためだ。

開進総建の事務所に戻ると、1Fの被災者も2Fの被災者も死亡したと知らされる。

翌日は、1Fの災害の事例検討会を行なった。事例検討会は「災害が起きた原因」や「災害を防止するための対策」などを複数の作業員で意見を出し合うものだ。似たような作業や同じような現場では有効だし、危険感度の向上にも繋がる。

事例検討会をしていると悲しい気持ちになったが、それだけではなく、色々な疑問が湧いてきた。『1Fと2Fの違いはあっても、どちらも東電の原子力発電所だ。そこで連日の死亡事故が起きたのは、ただの偶然だろうか』
『なにか共通する原因があるのだろうか』
『組織体制に問題があるのではないだろうか』
『今後も死亡災害が起きてしまうのではないだろうか』

労災の影響で、多くの工事は中止になり、作業員は事務所で待機するか、内作をしていた。私は、2月4日までまともに作業をすることが出来なかった。

「続く時は、続くんだっけ」
事務所にいた作業員達が、死亡災害について話をしている時に出た言葉だ。なんの根拠もないが、そういうものなのかもしれないと思えた。

当社原子力発電所(福島第一,福島第二,柏崎刈羽)で発生した重大な人身災害の原因と対策および安全性向上対策について 平成27年2月2日 東京電力株式会社

作業員時代まとめ その9 「1次請け会社への出向」へ

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