放管時代 磯浦電気その1 まとめ「アルプスの点検手入れ工事」

 磯浦電気の放管として働いていた2015年6月から2017年3月までの期間の大半は「アルプスの点検手入れ工事」に従事していた。

多核種除去設備(アルプス)

汚染水を処理する設備。「advanced liquid processing system」の頭文字を取ってアルプスと呼ばれている。

1Fには3基のアルプスがある。
「既設アルプス」最初に作られたアルプス。
「増設アルプス」2番目に作られたアルプス。
「高性能アルプス」最も新しいアルプス。
磯浦電気は、既設アルプスとと増設アルプスの工事に携わっている。

点検手入れ工事

機器や配管は定期的に点検と手入れをする必要がある。
配管のガスケットの交換をしたり、残メディア作業などが行なわれる。

ガスケット交換

配管と配管の間にはガスケットと呼ばれるシール材が使用されている。
交換は配管を取外して行なわれる。

残メディア作業

吸着塔は汚染水に含まれている放射性物質を吸着し、汚染水を処理する設備で、それには活性炭や樹脂などの「吸着材」を用いる。その吸着材は吸着塔の内部にこびり付くので、取り除く必要があった。
吸着材はメディアとも呼ばれていたので、その作業は「残メディア」とか「残メディア作業」と呼ばれている。

放射線管理

被ばく低減

処理前の汚染水が流れている配管や機器の内部は線量が高く、β線の被ばくが特に問題になる。

距離・位置
被ばくを低減させるには、作業位置と距離が大事になる。配管や機器を取外したフランジ部の正面やその近くは線量が高いので、作業員には出来るだけ離れてもらったり、フランジ部の反対側などで作業してもらう。


β線被ばくの位置と距離のイメージ

遮蔽
フランジ部をゴム板で塞ぐと遮蔽になる。β線を遮蔽する場合は軽い(原子番号の小さい)物を使うのが基本だが、ゴム板は軽くて、加工もしやすく、テープで貼るのも簡単なので、よく使われた。

配管内には汚染水やスラリーが残っている場合が多く、それらは放射線源そのものだ。それを入れた袋や落とした先の養生も放射線源になってしまうので、すぐにプラスチックのバケツに入れて遮蔽する必要がある。

身体汚染防止

汚染水は身体汚染でも問題になるので、対策が必要だ。
・汚染水に触れる作業の場合はアノラックを着てもらう。
・汚染水を扱わなくても現場の汚染が酷い場合は、アノラックや透湿性防水スーツを着てもらう。
・ゴム手袋をまめに交換してもらう。

汚染拡大防止

汚染水は現場環境の汚染でも問題になるので、対策が必要だ。
・配管や機器の取外しなどで汚染水が出る場合は、周りの床面や設備をシートで養生して汚染を防ぐ。
・塵(ダスト)状の放射性物質が広がる可能性がある場合は、作業場所にハウスを作って覆う。
・汚染した場合は除染をする。

問題・課題

アルプスの点検手入れ工事をするうえで、問題や課題がある。
・既設アルプスと増設アルプスには、狭くて点検手入れしにくい場所がある。狭いと被ばく低減も難しくなる。
・既設アルプスと増設アルプスには、汚染が酷い箇所がある。
・既設アルプスは、床面が塗装されていないので除染しにくい。

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